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最期の1日
いつもより少しだけ早く目が覚めた。緊張でもしているのだろうか。いや、あと24時間ほどで俺は死ぬのだ。いつも通り過ごせるほうがおかしいだろう。
昨日、1日中考えて願いは決まった。
「おい、死神」
そう呼ぶと死神は何処からともなく現れた。
「おはようございます、デュロック様。なんとも清々しい朝ですね。今日は快晴。まさに死に日和でございます」
なんてデリカシーのない死神なんだ。お前は何度も死の瞬間を見ているかもしれないが、俺はただ一度の人生、最初で最後の死なんだぞ。それに日和もクソもあるか。
「願いが決まった」
「俺の願いは、俺が死後どうなるのかを見ることだ。まさか殺すことが目的ってわけでもないだろ。殺されたあと、俺の体がどうなるのか最後まで見届けたい」
死神が少しだけ顔を伏せ、ニヤリと笑うのを俺は見逃さなかった。
「デュロック様の願い、承認いたしました。
私の命に賭けてその願い、遂行させていただきます」
まあ、賭けることになるのはデュロック様の魂ですけどね、などと言って死神は笑ってみせる。
「なに、死神ジョークですよ」
さっきからこいつのジョークは死が間近に迫っている当人には全く笑えない。
「これから24時間、私はデュロック様がお亡くなりになるまで隣で記録させていただきます。これは規則ですので拒否はできません。
もし、お邪魔のようでしたら姿は消しますので無視いただいて結構ですし、お暇な時間の話し相手にしていただいても構いません」
「わかったよ。とりあえず、今は姿を消してもらえないか。もう少しだけ感傷に浸りたいんだ。あんたがいると、どうもおちゃらけた雰囲気になっちまう」
「そうでしたか。それは申し訳ありません」
死神はわざとらしく大げさに謝った。そういうところを言ってるんだ。
「それでは思う存分感傷に浸って下さい。それはもうビチャビチャになるくらいに」
笑い声を残して死神は消えていった。
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