最期の1日

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午後1時。 やつが来た。死神というとあのおちゃらけた死神と混ざって紛らわしいので、死神(仮)とでも呼ぼうか。 死神(仮)はいつものように俺たちの部屋の扉を開け、外へ連れ出した。反抗する気は起きなかった。どうせ俺の寿命は今日で終わりと決まっているんだから。 外へ出ると、そこには大きなトラックが待ち構えていた。そして、死神(仮)は俺たちはトラックの中へ誘導していった。 どれくらい経っただろうか。ここは外の光が入らないので時間の感覚がおかしくなる。もう10時間はトラックに揺られている気がする。何もせずにただ立っているだけ。頭がおかしくなりそうだ。 「おい、死神」 たまらず俺は死神を呼んだ。 「はいはい、デュロック様。ようやく呼んでいただけましたね。私、退屈で退屈でもう死んでしまうかと思いました。 まあ、死神だから死なないんですけどね」 これだから呼びたくなかったんだ。 「トラックに乗ってからどれくらい経ったんだ」 「約10時間といったところですね。デュロック様、ピタリ賞ですよ。素晴らしい時間感覚をお持ちのようで」 なんと、思考まで読まれているのか。どうやら俺にプライバシーなんてものは存在しないらしい。 「いえいえ、この24時間に限った話ですよ。これも記録を取るためですのでお許しください」 「なあ、これから俺はどうなるんだ」 「未来のことに関することはお話できないのですよ。規則で定められているんのです。私とデュロック様の仲でもそれは破ることはできません。ご容赦ください」 死神はわざとらしく肩を竦めてみせる。 死神というのはこういう奴ばかりなのだろうか。俺の人生は1回しかないのでどうにも確かめようがない。 そこから4時間ほどは死神とたわいもない話をして過ごした。俺の担当は残念ながらこの通りお喋りな死神なので、幸い暇を持て余すことはなかった。
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