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「ふふ。秋といえば、香り高いことで有名なあの食材があるじゃないか」
「食材? 秋の香り高い食材といえば…………松茸! わかった、カサってのはキノコのことっすね!?」
「その通り。秋の香りの代表格といえば松茸といえるね」
「つまり……俺の足元には今、国産の松茸が……!!」
ほんの一瞬記憶の中にある松茸の香りが鼻をかすめていったような気がしてアトソンくんがごくり、と喉を鳴らします。
そればかりか、
「まだ終わりではないよ。その松茸が〈盈ち盛りたる〉んだ。〈盈ち盛りたる〉とは『満ち溢れている』ということ、つまり
〈高松の この峯も狭に 笠立てて 盈ち盛りたる 秋の香のよさ〉
とは……」
「山の峰いっぱいに、松茸が、ところ狭しと生えていて、俺の周りがおいしそうな匂いに満ち溢れている!!!」
口に出すと同時に、アトソンくんの頭にその景色が浮かび上がります。
スッキリ晴れ渡る秋の山、地面に広がる紅葉を押し分けぷっくりと傘をふくらませた大小さまざまな松茸、その一帯にはかぐわしい香りが立ち込め、素晴らしき秋の豊穣を祝福しています。
まぁるい松茸は混ぜご飯に、開いた松茸は網焼きに、ちいさな松茸はお吸い物に――――じゅるり。
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