はじまり

2/12
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 軍隊に入って一カ月、初任務が無差別な虐殺とは本当についてない。 ついてないというか人としてどうなのか。 自国の為ならば、ときに殺人は正義となりうると教官はそういったが彼にはそう思えなかった。 人殺しは人殺しだ。だが入隊したての新米兵士である自分ではどうしようもない。  同じ軍人であった父の意志を継ぎ国のためにと淡い希望を抱きながら入隊した彼だったが現実は違っていた。その時、彼は自分がどうしようもない馬鹿者に思えた。  三日程前、自国の秘密機関から逃げ出した生物兵器が、とある街に潜伏しているという情報が軍内部に出回った。  自分たちのミッションは生物兵器の回収もしくは抹殺とそれにかかわる一切の証拠も残さないことだ。  仲間達が次々と街に流れ込み銃声を悲鳴が街をつつむ。 火炎放射器を手にした仲間の一人は、まだ息をしている街の人にも火をつけていった。  いつしか彼の眼前には十四、五歳の少女と老人が横たわっていた。まだ二人とも生きている。 彼の任務は一切の証拠の抹消だが、彼にはそんなことはどうでもいいように思えた。彼はただ二人を助けたかった。 どうすればいい?どうすれば・・・
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!