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ーところどころから聞こえてくるあらゆる雑音(ノイズ)。
そびえ立つ高層ビルは夜でも煌めいている。
国道を走る自動車はエンジン音とクラクションを鳴らして渋滞を作っている。
歩道を歩く通行人は携帯電話相手におしゃべりをしてアルバイトの若い男女は宣伝文句を口にしながら道行く人々にポケットティッシュを押し付けている。
とあるビルの屋上では激しい金属音とともに火花が散っている。
数人の黒い影ー。
スーツ姿の男達数名が奇怪なピエロの仮面をつけた男を取り囲んでいる。
スーツ姿の男の一人は男に消音器(サイレンサー)付きの銃を向けて引き鉄を引いた。
しかし仮面の男には弾道が見えているのかひゅるりと後ろに身をひるがえしながら次々と自分に向け放たれる銃弾をかわしていく。
仮面の男は後方に飛び退きながら真っ黒なコートの裾から幾本ものナイフを取り出すと、いっぺんにスーツ姿の男達に投げつける。その一本一本は男達の頸動脈を切り裂きながら宙を舞った。
断末魔をあげながら死んでいく仲間を目にし、少しおののきながらもなんとかナイフの攻撃から逃げ切った男の一人は、手にした刀で仮面の男に斬りかかるが、その刃は仮面の男が左手に持った銃でうけとめられてはじかえされてしまった。次の瞬間ー
一瞬よろめいた男の眉間には風穴が開いた。
仮面の男が手に持った銃口からは煙がたちこめている。
「うわぁぁぁ」
最後の一人となったスーツ姿の男は恐怖に怯えながら身を翻して、後方にある星空の出入り口に向かって走りさっていく。がー
仮面の男はその背中に躊躇なく四十五口径のマグナムを撃ち込んだ。
スーツの男が前のめりに倒れた。
男は仮面をはずし街の灯りを一瞥すると、その場から静かに去っていった。
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