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地獄のような夜を過ごした翌朝、心も体も重かったが、幸一は何とか出社した。すかさず小林が明るく声をかけてくる。
「よう、西野!!もう治ったのか?随分心配したぜ。」
ふふっと幸一は笑う。この男に話しかけられると自然と心が上向いてくる。
「ああ、悪いな。もう大丈夫だよ。合コンどうだった?」
小林は両手を広げ、首をかしげてみせる。
「もう、サッパリよ。やっぱお前みたいなイケメンがいないとダメだな。次はよろしく頼むぜ。」
ポンポンと気安く幸一の肩を軽く叩く。
「仕方ないなー。お前も早く彼女つくりな。」
昨日からの憂鬱な雰囲気と胸の苦しさがどことなく軽くなったようだ。やはり会社に来てよかった。一人で家にいるよりも随分気がまぎれる。小林の変わらない明るさにも救われたようだが。そのうち、何もなかったことのようになるだろう。今は最低の状態でも、時間が全てを解決してくれる。今までだってそうだったではないか。浮気して美悠の顔を見れなくなった時も、最後には何もなかったかのように、二人上手く付き合えていたではないか。今回もきっと大丈夫だ。必ず乗り切ってみせる。
「なあ西野。お前そんなに甘いもの好きだったっけ?」
「え・・・?」
幸一と小林はいつものように社員食堂でお決まりの日替わり定食を注文し、席をとっていたが、幸一は日替わりのハンバーグとエビフライ定食に加えてアップルパイとチョコレートケーキもお盆に乗せていた。自分でもほぼ無意識のうちに盆にとってしまっていたらしい。言い訳がましく幸一は言った。
「あ、ああ。何かここんとこ疲れちゃってさ。甘いものとると頭が良く働くから…」
「頑張りすぎなんじゃないの?課長もこの前言ってたけど、同期の中でもお前は真面目なんだから、あんまり無理しすぎんなよ。」
「大丈夫だよ。大丈夫。ちょっと疲れただけだから。」
幸一は無理に笑顔をつくって、安っぽい銀メッキのナイフとフォークでハンバーグを切り分け始めた。
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