Noriyuki

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玄関に置かれた キャベツとソーセージを煮込み スープを作る フランスパンと一緒に食べる 「紀行さんも どうぞ!」 食器棚にあったスープ皿に 2人分 盛りつける 「こんな森の中 買物大変かと思ってたけど 紀行さんが買いに行ってきてくれたのね 助かった ありがとう」 私は自分のスープを食べてから 一応 手を合わせ 拝んで 「紀行さん もうご馳走さまね?」 と もう一皿を食べる お化け屋敷って 意外と楽しい きっと 仲良くしていれば 怖いことしない と思う 子どもの頃 おばあちゃんが言ってた 死んだ人の霊だって 生きてる人と 別に変わらない 大事にしていれば 生きてる人を 守ってくれるんだって 私は食器を片付けて また ピアノに向かう ピアノの部屋には あまり明るくない黄色味がかった光の 大きなスタンドライトがある  ピアノの椅子に座ると その後方から光が射すので 譜面立てに楽譜を置くと かすかに私の頭の影が映る 影が映ると楽譜が見にくいので ライトの位置を変えようと 立ち上がった時 確かに 私以外の人の影が 譜面を横切った 「えっ? 紀行さん?」 本当に彼はいるのだ 少しドキドキする 「スタンドの位置ずらしたいの だって頭の影が映って落ち着かないから」 私は あたかも 彼がここにいるかのように 話しかけながら スタンドライトを ピアノの鍵盤の左サイドまで移動する その夜はショパン 英雄ポロネーズを ガンガン弾きまくる どんなに音を響かせてもいいんだ 朝まで弾き続けてもいいんだ なんて素晴らしい環境 しかも奥の本棚には 私が前から欲しかった楽譜が たくさん揃っている 私は頑張ってピアノを練習して 何かコンクールに挑戦してみようかと そんな気持ちにさえ なってくる
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