嘆きの追憶

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いつもは授業だけが楽しみなのに富士子は全く集中できなかった。 ( なんとかしなければいけない。どうすればいいんだろう。先生に言う? ダメだ。それだけはダメ。そんな事をしたら、 「 先生にチクった。」 と、今までよりもっとイジメられる。それは間違いない。) だって先生に言った人が、 「チクったな。カスが!ボケが!」 と、言われているのを見た事がある。それに先生に用があって職員室へ行った時、富士子は担任の先生が若い先生を叩いているのを見た。富士子は毎日自分の親から叩かれていたけれど、学校の先生が先生を叩いているのを見ながら、 ( してはいけない事をしている。) と、感じたのを今でもはっきりと覚えている。 (親は何の役にも立たない。先生に言ってもダメ。じゃあどうすれば良い?) 富士子はカラカラの脳みそを振り絞って考える。 ( 私だったら言葉でやり込めてしまう。) いつも冷酷な両親から酷く汚い言葉を投げかけ続けられているから富士子は人を言葉で罵るのは得意だ。でもそうしたら相手はみんな泣きだしてしまい恐ろしい物を見るような目で富士子を見て、それきり2度と近づいて来ない。人にそんな事をしてはいけないんだと富士子は知った。
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