嘆きの追憶

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それに言葉でかなわないと解ってるから、あんな子達は乱暴に暴力を使ってくる。殴られるのは両親からだけで充分だ。あれこれ思案していると小田君が目に入った。小田君はつい先日、富士子に話しかけて来た。目の前に給食を並べられて全員に準備が出来るまで決して食べてはいけない。朝ご飯も食べて無いからお腹が空いて倒れそうなのを必死になって机にかじりついていた富士子の隣に座って小田君は、 「 僕は尾上君が大好きなんだよ。」 と、富士子に話しかけて来だ。隣の子は給食当番で働いていたから席は空いていたけれど、 ( 突然、何を言い出すんだろう。) と、富士子が不思議に思っていると、 「 僕だけじゃないよ。男子は皆じゃないかな。だって尾上君はスポーツがなんでも出来て勉強もすごく出来るのに少しも威張ったりしないで素晴らしい人だから。」 「 うん、そうだね。」 「でしょ、でしょ、だから僕は尾上君が大好きなんだ。」 ( それをなぜ私に言う。本人に言ったらいいのに。) 富士子がいぶかっていると小田君は満面の笑みを残して自分の席へ戻って行った。 ( そうだ、尾上君がいる。)
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