嘆きの追憶

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富士子は尾上君を見つめて、 ( 彼に頼むしかない) と、心に決めた。小学校1年の時からよく知っている。休み時間になって富士子は尾上君の所へ走って行った。 「尾上君、さっきの見てたでしょ。ひどいよね。京田君は何も悪くないのに、どうすることも出来ないのに、京田君はあんなに良い人なのに。尾上君からあの男子達になんとか言ってもらえないかな?」 「 僕は何も言ってないよ。」 尾上君は大きな目を真ん丸にして富士子に言った。 「もちろんだよ。尾上君がそんな事する訳ないじゃない。尾上君はみんなのリーダーだもん、男の子達の憧れの的だもん。私知っているもん。」 「 僕はイジメたりしてないけどな。」 尾上君は頭を掻きながら困った顔をした。 「 先生に言ったら?」 「 ダメよ。そんな事したらもっともっとイジメられる。頭の良い尾上君なら良くわかるでしょう。私さっきの授業中にずっと考えたんだから。あなたしかいないの。あなたにしか出来ない事なの。」 必死で話しながら富士子は尾上君には本当に関係ないと思い始めていた。でも富士子が話し終わると尾上君はその足で、さっきひどい事を言った男の子達の所へ行って話し始めた。
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