嘆きの追憶

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玉井さんのお母さんは有名な私立の女子大の教授だそうだ。 (お母さんが偉い人だからって子供が威張るなんてとんでもない。) と、富士子は思う。だって親と子供は別の人間だからだ。私の両親がどんなに冷酷な人間でも私もそうだと思われたらたまったもんじゃない。富士子は両親のようには決してなるまいと心に決めて生きて来た。でもクラスの女の子達は、 「玉井さん、私が大学を受ける時はお母様に、いや教授によろしく言ってね。お願いよ。」 「 私もよろしくお願いします。」 と、みんなペコペコしている。 ( 自分の力で合格しようとは思わないのかな?) 富士子は不思議だったが、これが現実だ。一番きついのが無視される事だ。富士子は自分の家でも毎日両親や弟達から無視されて続けているから慣れていると言えば慣れている。でも富士子は幼稚園に初めて行った日から沢山の友達が出来て、その人達を大切にして来た。何年もかかって築き上げた友人関係をぶち壊されて富士子は戸惑った。授業中は教科書を夢中で読んでいれば気がまぎれる。それでも玉井さんは富士子の悪口を書いた紙をクラス中に回して、それをわざわざ富士子にも見せた。作りごとの嘘だ。富士子の両親と一緒だった。 ( 小さな頃から私を見てるなら、私がどんな人かわかるはず。) 富士子はクラスの人達を信じていた。
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