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「……お腹空いた」
アニメに出てきそうな可愛らしい声で少女はそう言って、お腹を押さえる。
「あわてて人化したからなあ。感覚も人間に近くなっちゃったんだ」
この口ぶりからすると、やっぱりこの少女は普通の人間ではないらしい。
こんな漫画みたいなことがあっていいのだろうか。でも……。
脳裏を過ぎる記憶と一つの想いから、私はかがんで少女に手を差し伸べた。
「だったら、私と一緒にご飯を食べに行かない?」
「ごはん?人間のごはん?」
私が言うと少女は少し戸惑うような表情をして、一度くるりと背を向ける。
「でもお腹がすいてたらお家にかえれない……。それに人間のごはん、おいしいらしいってお兄ちゃん言ってた……」
そんな事を言って少女はしばし考え込んだ末に、またこちらに目を向けて差し伸べた手を取った。
「うん。リリー、お姉ちゃんと行く」
「へえ、可愛い名前だね」
少女はリリーと名乗り、ぎゅっと私の手を握る。
こうして私は不思議な少女を連れて朝ごはんを食べに行くことになったが、見た目はどこぞの外国人のようなリリーを連れ歩いて、不審者や誘拐犯と勘違いされないだろうかといった不安も募った。
「ハーフの娘だとか、姪っ子を預かってるとか言えばいいかな。じゃあお店に行こうか」
「うん!」
そうして私は神社を出て、地図アプリを見ながら目的地のお店へと向かう。
リリーを連れていることで案の定道行く人の視線を感じたが、幸いトラブルは起こることなくお店に到着した。
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