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カクテルにあふれる想いを
「心はひとつの言葉では言い表せません。簡単に名づければ形を失う感情はたくさんあります。僕もいろいろ思うことはありますよ」
まだ酒を飲んでいないのに彼女は頬を赤らめた。誤魔化すように彼女はカクテルを一気に飲んだ。グラスを少しこちらに押す。
「酔わせてください。今夜こそ」
もしかして彼女は――。
「危険な言葉ですね。僕以外の男にいってはいけませんよ」
「もちろんです」
こちらに向けた笑みは、女の顔だった。
そんな表情もできるのか。
一夜しか会ったことがないなら何もわからないか。それでも僕は彼女に溺れている。
シェーカーを振る僕を彼女が見守る。
手のなかの酒にあふれる想いを込めたい。今宵のカクテルで、彼女が僕に心奪われますように。
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