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「このヒヨコをどうするの?」
「嘴を切る。」
思いもよらないことばに、ヒヨコを抱いたボクの手が止まる。
「なんでそんなことするの?痛いよ、ヒヨコ。」
ボクは泣きそうになるのを我慢しながらお父さんに言った。
「そうだな……。でもな、嘴が尖っていると、大きくなった時に近くのニワトリをつつくんだ。ニワトリが怪我するのも嫌だろ?」
「でも……。」
「大丈夫、嘴は爪みたいなものだから痛くない。」
そうなんだ、とボクは手の中のヒヨコをお父さんに手渡した。するとお父さんは、ヒヨコの首を指で挟むようにむんずと掴んだ。
「こうすると暴れられないんだ。
暴れるとヒヨコが危ないからな。」
そう言ってお父さん、爪切りのおばけみたいな機械にヒヨコの嘴を差し込む。思わずボクは目をそらすように次のヒヨコに手を伸ばした。すると背中の方でプシューという音が聞こえた。しばらくしてピヨピヨという声が違う方から聞こえる。見るとそこには嘴が四角くなったヒヨコが別のケースに入っていた。
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