気になる君。

9/19
前へ
/230ページ
次へ
「……」 寒くて震えていたわけじゃないんだけど……。 私の手に残されたカイロは、見当違い。 だけど、それはポカポカとすごく温かく、私の表情には自然と笑みが浮かんでいた。 彼の優しさが嬉しくて、震えるくらいの緊張が少しほぐれた瞬間だった。 その……カイロを渡してくれた男子っていうのが、他でもない前原くん。 それから彼は、私にとってちょっとだけ特別な人。 好きっていうのとは違うけど、恩人……っていうのかな。 もともと引っ込み思案な性格もあって、タイミングが掴めなくて、『ありがとう』とお礼を言うことも出来ずにいるけど……心の奥では、ずっと感謝してる。 そんな人だから、自分の親友にあんな風に言われちゃうのは、あまり心地よいものではないんだけど……。 「はぁ」と、もう一度ため息をつく。 周りを気にしちゃって、親友にさえ思っていることが言えない自分は、ずるくて嫌なやつだ。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加