気になる君。

10/19
前へ
/230ページ
次へ
結局、本当の気持ちは何ひとつ言うことができないまま、数日が過ぎた。 朱里と梨花の間では、私の“好きな人”はすっかり田澤くんになっていて……。 それは、とある日の放課後のことだった。 「ね、実優」 6限目の授業が終わり、教室の掃き掃除をしていると、何やら嬉しそうに梨花が話しかけてきた。 「どうしたの?」と手を止め、私が聞く。すると梨花は、教室の中をチラッと目で確認した後に、 「今日の日直、代わってあげる」 私の耳元でナイショ話をするように囁いた。 「……え?」 今日の日直……って、今日の仕事はもうほとんど終わったに等しい。 黒板も既に消してあるし、かろうじて残っていることと言えば、日誌を書いて先生に提出することくらい。 それに『代わってあげる』って、その言い方はなに? 「何か用事でもあるの?」 腑に落ちないものを感じながら、とりあえず聞いてみた。 用事があって急いでるから、代わって欲しいのかな……って、純粋に思って。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加