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意地悪されたわけじゃない。ただ……前原くんに無視されてしまっただけ。
日直のときも、教科書を渡したときも、前原くんの方から話しかけてきてくれたのに……今日は喋ってはくれなかった。
それどころか、声をかけようとした私を、前原くんは避けた。
たぶん原因は、自分。
教科書を隠されたあの日、私は朱里に手を引かれ、まるで前原くんと仲良くするのがダメなことだと言われるみたいに、教室を出て行った。
その後そのまま……彼と改めて話すこともなく、何もなかったように過ごしてしまった。
そんな私を、前原くんがどんな風に思ったかは、言われなくても分かる。
きっと……みんなと一緒だと思われた。
いじめられている前原くんを見て、ただ笑っているだけの……クラスのみんなと同じだと。
「もう実優、どうしたのー?」
オロオロとしながらも、頭を優しく撫でてくれる梨花。
「何でもなっ……」
こんな所で泣いちゃって、みんなが見てるって分かってるのに、梨花が優しくしてくれるから、なかなか涙が止まらなかった。
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