言いたい、言えない、キミが好き。

気になる君。

田澤くんがいつもクラスの中心にいる人ならば、前原くんはいつもクラスの隅っこにいる人。

席について読書ばかりしていて、女子はおろか男子とだってあまり話している所を見ない。

この学校でもう２年の時を過ごしてきたけれど、一体何人の人が前原翼（まえはらつばさ）という、彼のフルネームを答えることが出来るだろうか。

それくらい……影の薄い男子。

だけど私には、入学してきたその日から特別な人だった。

私の暮らす地区は、ふたつの小学校の卒業生がひとつの中学に通うことになる。

だから当然、今まで会ったこともない人達も沢山いるわけで……。

初めてのクラス。親しくない人、知らない人ばかりだったらどうしようと、入学する前から不安だった。

どうか友人達と一緒のクラスになれますようにって、毎日のように祈っていた。

だけど、こういうときこそ神様は意地悪。

私の不安は見事に的中して、手渡されたプリントには知らない名前がずらりと書いてあった。