気になる君。

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どうしよう……。 意識せずとも、カタカタと震え出す手。 とりあえずと目新しい教室に足を踏み入れてみたものの、同じ小学校からの友人でグループが既に出来ていたりして、孤独感と不安は一層大きくなった。 怖くて、自分の席までも歩いていけない。 今すぐ逃げ出したくて……でも、そんな勇気もなくて、立ち尽くしていたときだった。 「……大丈夫?」 背後からかけられた声。 ビクッとしながら振り返ると、立っていたのはメガネをかけた男子。 初めて見る人で、正直戸惑い、目を丸くしたまま、何も言えずにいると……。 「はい」 彼は私に、あるものを差し出した。 それは手のひらサイズの小さなカイロ。 「え……」と声を上げながらも、カイロを反射的に受け取ると、 「ずっと震えてたから」 笑うでもなく、微笑むでもなく、彼はあくまで真顔のままそう言って、自分の席へと歩いていった。
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