出会ってしまった

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財布の中に1枚の札が入っているのを確認して、定期的に通っている本屋へと私は足を向ける。 その足取りは軽く、自然と浮足立っていた。 そう、私は期待で心が浮き上がっていた。 今日は、大好きな大好きな作品の発売日。 扉の前に立つと、自動ドアのセンサーが私に反応して素早く開き、中へと導いてくれた。 一歩足を踏み入れると、私の鼻は本屋独特の紙の匂いに満たされた匂いを嗅ぎつける。 閉め切ったその空間は決して空気のいいものではない筈なのだが、新鮮な本という名の空気が私の身体を駆け抜け、喜びで打ち震える。 数秒間、その踏み入れた瞬間の匂いを堪能した後、私はとある棚へと足を速める。 目当ての本は決まっている。 大好きな作家様が描いているオリジナル漫画、「美しく散れ」という美男美女だらけの海賊漫画だ。 とにかくキャラの絵の美しさがたまらない。 何より男のビジュアルが滅茶苦茶好みなのだ。 まつ毛も無駄に長すぎず、実物のアイドルにかなり近いような現実的な長さ、目の細さ。でも中の瞳は漫画らしく芯のある強い輝きを持ったキラキラとした瞳。髪は現実では難しいであろうサラサラ感、なのにチョコチョコと寝ぐせのような乱雑に飛び出た細い髪を散らしているのがかなりいい。加えて、白黒の紙の中であるにも関わらず潤いと艶が伺える細めの唇。直接触れるわけがないのに、何度紙の上でその唇をなぞってうっとりしたことか。 そして、キャラだけではなく。 事細かに書き込まれる美しすぎる背景。 作家さんは、絶対天才だ そしてそして、今日はその作家さんの新刊の発売日。
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