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「フフ……」
高ぶる期待のあまりに独り言のように笑みをこぼしながら新刊を並ばせる棚に一直線へと進む。
この本屋は、その日発売の新刊を出す位置が絶対に決まっている。
そのおかげで、いつも新刊を買うのに困らなくて助かるのだ。
棚にたどり着くと、色紙に描かれた「今日の新刊だよ!」と喋っている可愛らしいツインテールの女の子が目に入った。
肌や紙の色は塗られていない白黒の女の子は、くりっとした目の大きさと、瞳の中に書かれたハートが印象的だった。
視線を少し下げると、その女の子の丁度下に目当てのものはあった。
「あった……!」
独り言、というものは本来恥ずかしいものだ。
だが、抑えきれない喜びを口にするときは周りが全く気にならないものだ。頭も心も視界もそれでいっぱいなのだから。
あふれ出た喜びを口にしながら私の視界では煌びやかに輝く宝物のような新刊を手に取った。
手に取り、新刊のさらつや感と新鮮な重みをじぃんと感じ、早く読みたいとそわそわ逸る気持ちのままにレジへと足を運ぶ。
早く家に帰って、ベッドの上でゴロゴロしながら読みたい。
枕を抱えながら柔らかいマットの上に漫画を広げゆっくりとページをめくり、漫画の世界へとトリップする。
30分程度のその時間は至高の時間。
10分後にはもうその定位置で漫画をめくり始めているだろう自分を想像し、うっかり涎を垂らさないよう唇をきゅっと閉じながらレジへと急ぐ。
が、その足が。
ふと、止まった。
私の眼は、滅多に見ない棚に釘付けになっていた。
――あれ?
レジへと急いでいた足が、視線の先の棚へとつま先が向いた。
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