七月

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翌朝。 リンドウは普段の寝具の上に夏場だけ敷く寝茣蓙の上で、やや高い陽光の眩しさで目を覚ました。枕元のスマホを見る。もうこんな時間か。既に結構暑いよな。かったるいなあ。と、ごろごろしながらふと、あ、そうか今日は先祭の山鉾巡行だよな、と思い、キョウストリームの放送で緩慢に眺めようとスマホを操作した。 ピッ。画面が現れる。 「ええ、今こちら、籤検めの前のテント前です、この辺りの沿道の皆さんは、籤検めの所作が楽しみでここを選んだと語って下さった方が多いですねえ、籤取らずと呼ばれる長刀鉾が先頭に参りますのでお楽しみに」 レポーターが汗を拭い拭い、楽し気に語っている。 「あのですね、今気温が大変上がって来ておりまして、周りの方の熱中症が心配なのですが、私共もこうして、少々お見苦しいかもしれませんが、所謂クールビズの恰好で中継に臨んでおります、この後更に、注連縄切の場所まで一部クルーは移動しますからね、万全を、期しておりますよ」 ぐるりと周囲が映される。キョウストリームのロゴの入った開襟シャツを着用したスタッフ達。ああ、もう籤検めか。そろそろ篁帰って来る頃かな。籤検めは九時ちょい、と昔から覚えていたリンドウは別段時計も確認せず、のんびりと再び、全画面表示になっている中継を見遣る。
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