七月

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リンドウは籤検めに切り替わる画面を後に、眼を閉じ、項垂れた。 ああもう駄目だ。篁、本気でやるつもりだよ。いつも通りのダークスーツのままで巡行ルート一周。頼りになるのは氷嚢三つだけ。氷柱と共に溶ける覚悟とまで言い切った。そこまでして現代の山鉾が生で見たかったとはな。しかし。もし倒れて搬送されても。篁には現代の身分証明も出来ない、医療機関に掛かる程だとしても、健康保険証なんて代物もある訳がない。何せ、戸籍もないのだ。思わず途方に暮れて天井を仰いで怒鳴る。 「あほかあああああホントにお前まで溶けたらどうすんだああああああ」
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