七月

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リンドウは、四条大橋北側を早足で渡り進んでいた。 無茶な篁を連れ帰るために急いで身支度をし、京阪線に飛び乗って来たのである。山鉾巡行ルートの外に当たる、四条河原町以東は、見物客で寿司詰めになる事もなく歩ける事をリンドウは知っていた。篁を捕まえるなら恐らく、ベストタイミングは四条河原町交差点での辻廻しだと踏んでの行動である。それなら十時前でも遅いくらいだ。急がなきゃな。午前だと云うのに強い陽射しが容赦なく降り注ぐ猛暑日だが、からからとした空気に混じって、人を避けながらも早足でずんずん進むリンドウの頬に、さやりと微風がかすめてゆく。少し違和感を感じたが、リンドウは商店街に架かる半端な長さのヒサシ屋根の陰を日向を歩き続け、眩しさに眩みながらも四条河原町交差点へと急ぐ。篁、どこだ。先頭を追って来たとしたらもう長刀鉾と共にこちらに向かっている筈だ。あいつ。全く。ちょっと自分が死んでるからって無茶しやがって。現世では生者と同様、この暑さすらも感じてんだから熱中症にならないとは限らないだろうが。四条交差点北東、沿道に集まった観覧客の人波に足を踏み入れたいが、小柄なリンドウは、大きな外国人観光客団体の後ろで立ち往生してしまった。おいおい、見えない、見えないって。皆、辻廻し待ってるから動かないし。見えねえってば。篁どこだよ。おい。参ったな。
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