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そして隆さんだけでなく、かわいい子供たちにもつらい思いをさせることになったかもしれません。
倫子さんはそっと目を伏せました。
やはり不倫は良くないと思います。それはよく分かっています。
しかし同時に、あの夜のことを思い出すと倫子さんの体は熱く震えるんです。あのとき服を脱ぐ度胸は無かったものの、彼を恋い慕う気持ちは倫子さんの胸の内に今も存在しています。そして一度火のついてしまったこの気持ちを消すことはできない……そのことを今、倫子さんは遠いこの故郷の地で強く感じたのでした。
「……康子ちゃんは幸せだね」
「え?」
倫子さんの呟きに、お母さんは目を丸くして驚いていました。
でも康子ちゃんはこの胸にこみ上げてくる想いをまっすぐに貫くことができたんですよ。恋を知ってしまった今の倫子さんは、それが幸せ以外の何者でもないと感じます。
「これ、やめとくわ」
薄く微笑んだ倫子さんは、まだ半分以上残っていたみたらし団子のパックに輪ゴムをかけました。小さめのお団子なので、今までの倫子さんなら一度に食べきっていた量です。お母さんは更にびっくりしていました。
ですが倫子さんは痩せなきゃいけません。脱いだらひどいという理由で逃げ出すなんて、もう懲り懲り。想いを貫くためにはまず、この体型を改善しないと。それに尿漏れも。
そういえば康子ちゃんは小さい頃から美人さんでした。スタイルも良くて、当時からぽっちゃりしていた倫子さんとは大違い。
そんな彼女は早熟な性質で、中学の頃にはこっそり化粧をして学校へ通っていました。
おかげで、彼女の可愛さに憧れた他の女子たちの間で化粧をするのが、一時期流行ったことがあります。
しかし男子たちはそんな子たちに冷ややかな目を向けました。
「康子はともかく、元が悪い奴は化粧なんかすると、余計に気色悪ぃんだよ」
それは倫子さんに向けられた言葉ではありませんでした。真面目な倫子さんは、校則を破ってまで化粧をする気はありませんでしたから。
しかし、男子の本音を聞いてしまったことで、倫子さんが化粧をすることに抵抗を抱いたのは確かです。
それだから可愛くなる為に努力をするのが怖くなってしまったし、その延長線上にある恋愛にも臆病になってしまいました。
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