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大きな揺れに、座席で俺は目を覚ました。
最寄りは終点駅だから、疲れのままにいつも電車では眠ってしまう。
それでも駅に着けば結構な確率で目が覚めるし、起きない場合は、車内を見回る駅員さんが必ず起こして外に出るよう言ってくれる。
自力で起きられなくても起こしてもらえる。その状況に安心しきって熟睡してしまった。でもそんな日に限って誰にも見つけてもらえず、電車は今から車庫にでも入るようだ。
運転席まで行って、降りそびれたことを謝って、一緒に運転室から降りるなりさせてもらおう。
そう思って戦闘車両まで来たのに、覗いた運転室には誰の姿もなかった。
自動運転の機能なんてこの電車にはない筈だ。それとも、車庫入れの時だけはどこかから電車がコントロールされているのか。
このまま車庫に連れて行かれたらどうしよう。
悩む俺の視界に、窓の外の景色が映った。
真っ暗だけど、外の景色が動いているのが判る。体も、電車がいつもの速度で走りだしたことを察する。
車庫じゃない。電車はどこかに向かって走り出している。でも、確かに俺の乗った電車は、最寄り駅が終点の最終電車だった。
いったいこれから俺はどこへ運ばれていくのだろう。
降りそびれた電車の速度がどんどんどんどん加速していく。
これじゃもう、無理に窓や扉を開けて飛び降りることもできない。
実は、まだ最寄り駅に着いてなくて、俺はいまだ夢の中。…多分望むべくもないけれど、そうならよかったのにと、行先不明の電車の中でそう思った。
最終電車はどこへ行く…完
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