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その頃、この小説の作者である梅木一夜の家ではこの事実をまだ知らなかった。
「お母さん、パパが家出してもう7年だよね」
「もうそんななる?」
「冷たいよね、パパに対しては」
冷蔵庫からオレンジジュースを取り出すと
コップに注ぎながら母親を見たのは
一夜の長女の岬。
「生きてんのかな?」
隣で朝食を食べていた次女の楓が興味なさげに岬を見た。
「アンタもさあ…冷たくない?」
「お姉ちゃんだって会社も家も無くなった時はめっちゃ怒ってたじゃん」
「また…あん時はね…でもさ…アレ、結局はパパも騙されたわけじゃん。それで…嫁からも娘からもそこまで言われたら可愛いそうじゃん、さすがに」
「じゃアタシ、先に行くよ!」
「お姉ちゃん、待ってよ!アタシも出るから」
姉妹が慌てて家を出る姿を横目に微かに顔が綻んだように見えた一夜の別れた妻の和枝。
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