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感情ニュートリノ振動仮説
「えー、それではですね」
冴えない背広を着た、中年の男が数人の生徒の前で講義をしていた。
「皆さんニュートリノって知ってます?」
男は壇上のスクリーンに大きく映されたそれを指して学生の中でも一番後ろに座っている眠そうな目の学生にも聴こえる様にマイクで呼び掛けた。
誰も答えようとせず代わりに何名かの失笑が漏れ聞こえたのを合図に一番前、と言っても全体から言うと中間あたりに腰掛けている女生徒を指差し棒で指した。
「君」
刺された女生徒は一瞬驚いた顔をしたが直ぐに気を取り直して
「えと、素粒子ですか?」
と聞き返した。
「そうだねいわゆる物質の最も小さな単位、と言われていてこれが振動してるというのは知ってますか?」
「……はい、振動している事でそれまで質量がないと思われていた事が覆ったとか?」
「そのとおり、それを証明したのは日本のスーパーカミオカンデだね」
そう言って教授は頷いた。
「あの……」
女生徒は何か言いたそうだ。
「……なにか言いたげだね、なんでもどうぞ」
それではと改まった顔で女生徒は応じた。
「脳科学の授業ですよね?」
周りからクスクスと笑い声が聞こえた。
「もちろん」
教授は動じることなくにこやかに答えた。
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