序章 暗殺者の日常

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序章 暗殺者の日常

 季節は秋。天気は微妙な曇り空。  ここは日本。東京都内の外れにある廃工場。  そこに生活空間を作った本人と、もう一人の二人が暮らしている。 「珈琲(コーヒー)、淹れますけど、どうします?」  キッチンに立つ一人の少女が尋ねた。  十八歳でごく普通の顔立ちをしていて、ショートボブの茶髪で瞳は黒。目の色は濃い茶系。白のフリル満点のワンピースを着ている。赤いヒールを履いている。身長は百五十センチほどと小柄だ。  一見すれば普通の高校生に見えるが、その腰にはホルスターに収められた年季の入ったリヴォルバーを二挺、吊っている。  彼女の名は美乃(みの)()。殺し屋として独り立ちしたばかりの新人だ。 「もらおうか」  ソファに座って、己の武器である日本刀、二本の手入れをしながら答える男の声は低かった。  身長は百八十センチほどで、引き締まった身体つきをしている。ワイシャツにロングコート、ベルト、スラックス、革靴に至るまで黒で統一されている。 二十八歳くらいだろうか。黒髪は首の辺りで無造作に切られており、切れ長の吊り上がった目つきをしている。肌は白い。瞳は黒。目の色はウルトラマリン(群青色)。  端正な顔つきをしており、武器さえ持っていなければ、かつ黙っていれば、女性が黄色い声を上げることは確かだろう。  だがこの男、口が悪い。  この男はキリヤ。この生活空間を作った張本人であり、長くここに住み着いている。  暗殺者としての生活をしだしてもう長い。  美乃華は熱々の珈琲を淹れると、キリヤの作業の邪魔にならないようテーブルの上に置く。  なぜかこの男は飲み物しか口にしない。 「ん」  キリヤは短く言うと、作業を終了し、近くに二本の刀を置くと、珈琲に手を伸ばした。  美乃華は自分でミルクティーを淹れ、キリヤの隣に腰かけて聞いた。 「私の初仕事、いつになるでしょう?」 「オーダーがこない限り、無理だな」  キリヤがにべもなく言い放った。  オーダーとは、殺害依頼のことだ。アダルという組織に所属する二人は、殺害依頼の報酬金で生活している。
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