第二章 魔女のお仕事

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 結局、王子は地下墓地の外に出ることも無く、一日魔女の仕事を見学しながら様々なことを訊ねた。 「いやぁ、今日は勉強になった。自国に仕える者の職務すら理解していなかったとは、王家の人間として恥ずかしいものだな」 「そうやって非を認めて成長出来るのは、殿下の素晴らしいところです」  二人して地下墓地から出てきた頃には、すっかり夕陽があたりを照らしていた。申し訳なさそうに頭を掻く王子の言葉に、魔女は珍しく彼を誉めた。 「――そうやって、わたしのことも考え直していただければ幸いなのですが」  と、思いきや追い打ちのような言葉が続く。  その言葉を受け、王子も真剣な面持ちを浮かべた。 「……テレサ殿が心から迷惑だと言うのなら。その時は諦めなければならないと思っている」  王子は魔女へ向き直る。 「今のところ婚約者になる気が無いのは分かった。だが、わたしが貴女に好意を持ち、求愛することも迷惑だろうか」  真っすぐに魔女の姿を見つめる王子の眼差し。堪らずに顔を逸らしたのは魔女の方だった。 「気持ちに応じる気はございません。……迷惑、とは思いませんが」  それを聞き、王子の顔は一気に綻んだ。 「そうか。それなら、もう少しわたしの我儘に付き合ってくれ」  魔女はただ小さく頷いた。 「ところで、いつもフードを深くかぶっているが、それは何か理由があるのか? 何もないのなら話をする時くらいは顔を見て話をしたいのだが」 「これは失礼致しました。普段は一人のことが多いものですから……」  特に深い意味は無かったらしく、魔女はあっさりとフードを脱いだ。  王子は絶句した。  肩の当たりで切りそろえられたサラサラとした銀髪に、夕陽が映える磁器の如き白い肌。紺青色の大きな瞳。  絶世の美女だ。 「どうかされましたか?」  不格好に口を開けたまま呆然とする王子の姿に魔女は首を傾げた。微かに首を傾けるだけで、銀糸のような髪はサラリと揺れる。 「すまない、あまりに美しかったので思わず見惚れてしまった」 「余計なことを言っていないで、早く城に戻った方がよろしいですよ。城の外縁にある森とは言え広いですから。迷ったら殿下と言えどどうなることか……」 「そ、そうか。それでは、また明日」  魔女に見送られ、王子は城へと戻っていった。
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