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補記: なにが欠落し、徘徊するのか?
島田荘司と綾辻行人という現代本格ミステリーの両巨匠による対談集『本格ミステリー館』 (角川文庫)のなかに興味深い記述がある。曰く、ベストセラー作家でもある内田康夫氏は、小説のプロットを事前に構築することなく、いきなり文章を書き始め、物語を完成させるのだという。逆にプロットをしっかり作ったうえで書いた作品には全然スリルがなく、面白くなくなるという。
それを受けて両巨匠は「それが本当だとすると天才だ」「信じられない」という反応を示しておられます。事前にストーリーの骨子を作らず、また細部を設定しない状態で小説を書くという作業は確かに常人離れしている。第一、ミステリーの醍醐味である伏線の配置とその回収という最大の見せ場がうまく機能しなくなるに違いない。プロットなく、いきなり小説、しかも長編を書くとなると必ずやそれは破綻してしまうだろう。
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