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“徘徊すべき欠落”――それは結果的に神前紗夜が視た妃奈子を指している。神前紗夜のなかで妃奈子の記憶は、大きく”欠落”している。さらに云えば、妃奈子は物質的基盤が”欠落”した儚い存在である。それが心的心像であるのか、あるいは幽霊であるのかは、この際あまり重要ではない。妃奈子の存在は、その”欠落”のゆえに意味をもつのだ。
そしてこの”欠落”の主体である妃奈子は、神前紗夜の魂から投影・分離され、この世界を彷徨う宿命にある。それは正に”徘徊すべき”運命を内在していたのだ。
今回の実験を受けて、こういった手法もときには有効かもしれないと思った。作者はなんらかの形でお題に対する回答を紡ぎだすものだと思う。私の場合、どうやら夜眠っている間にみる夢の影響が大きいようだ。
とはいえ、作者の頭の体操を、他の方にお読みいただいている、という罪悪感はつねにあった。
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