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 俺の診療所を訪ねてくるクライアントは心に傷をもった女性が8割を占めている。俺はクライアントの症状に誠意をもって耳を傾け、適切なアドバイスをしたあと最適な処方箋を出している。  クライアントたちはまるで亡霊に憑かれたかのような胡乱(うろん)な眼で俺を見つめてくる。一様に暗い顔をした女性たちの多くは水商売で生計を立てている。  彼女たちの多くは、その実、お客たちと楽しい会話ができない自分に苦悩している。コミュニケーション能力がものをいうそんな業界の荒波にのまれ、彼女たちは明らかに疲弊し、消耗していた。当然、彼女たちは然るべき苦悩と葛藤に苛まれている。  俺の診療所は夜遅くまで開業しているから、自ずとそんな女性たちの格好の駆け込み寺と化していた。2割いる男性の中には会社員やフリーター、なかには学生もいたが、女性の多くは夜の女たちだった。
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