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…………。
ダメだ……
なんでこんなことになってしまったんだろう? もう金は借りられない。返す金もない。取り立ても厳しくなってきた。
俺は何故間違えてしまったんだろう。今ならどれもおかしいとはっきりわかるのに、もう全て手遅れだ。今更やり直すことなんて出来ない。
唯一俺に出来ることは逃げることだけだ。この世界から逃げる。覚悟を決めて、飛び降りさえすれば……
あと一歩、あと一歩で楽になれる……
俺はビルの屋上から飛び降りようとした。しかし運命というヤツは本当に気まぐれというかよくわからないもので、こんな俺を呼び止める存在がいたのだ。
「待ってください!」
「誰だ、あんた?」
振り返ると、品の良さそうな若い女性がそこに立っていた。
「あなたが思いつめた顔をしていたので心配になって追いかけてきたんです。まだ死ぬのは早いですよ。良かったら私に話を聞かせてもらえませんか?」
「話したってムダだ! 俺はもう終わってるんだ。借金が山ほどある」
自暴自棄になっている俺に、彼女は落ち着いた声で冷静に説明した。
「自己破産って知っていますか? 知り合いに弁護士がいるので紹介出来ますよ。債務整理すれば借金はなんとかなるはずです」
「で、でも……学歴もないしまともに働いたこともない俺みたいな人間が今更まっとうになんか……」
「なれますよ」
女性は俺の手を取って微笑みかけた。
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