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根駒と席が隣同士だった当時、金髪で坊主だった俺に近づくのはどうしようもない奴らばかりだった。
中学校では部活動に明け暮れ、高校は男子校に進学。親の都合で引っ越すことになって、転校したくなかった俺は反抗の印として髪を染めた。
あの時「教科書見せて」と言ったのは、別に勉強したかったからじゃない。
単純に、根駒の側に近づきたかったからだ。
優しくて気遣いができる根駒は、クラスメイトたちの放つ微妙な雰囲気の変化に自分を合わせることができた。
クラスのリーダー的な女子も、大人しいタイプも、オタクもヤンキーも真面目も。
相手に合わせて七変化できて、おまけに楽しそう。
誰もが彼女と一緒にいることに居心地の良さを感じていた。
でも時々、寂しそうな表情をする。
俺は両手をズボンのポケットに突っ込んで、その顔を横目に見ていた。
今の俺もそう。
笑い終えた後の根駒の、一瞬の寂しそうな顔を見つけた。
「なんか、このままでいいのかなあって思っちゃって。辞めるかどうか考え中。それで、ちょっと飲みたくなって、ここに来ちゃった」
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