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「あ?」
根駒は体の正面を俺に向けて笑った。
「ここまででいい。送ってくれてありがとう」
時刻はまだ9時。
街の明かりや車のライトを背景にした根駒の顔は、逆光でよく見えない。
くるりと踵を返した彼女は、青になったばかりの横断歩道を渡って行く。
近づく事を、はっきりと牽制された気がした。
追いかけたいのに足が動かない。
人混みに紛れて見えなくなっていく後ろ姿。
ーーどうせ、俺が告ったところで、アイツにはもっと相応しい男がいるし。
根性なしだった高3の俺が蘇る。威勢がいいのは見た目だけ。
横断歩道の音楽が、やけに響いて聞こえた。
ーーそれでいいのか?
十年間後悔してきたのは、どこのどいつだ。
覚悟を決めろよ!
走れ! この根性なし!
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