着せ替え人形に憧れて

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 帰宅した娘が真っ先に向かったのは押入れに仕舞ってある箱。だいじなはこに入れてあるルカちゃん人形。 「五体ちゃんとある」  苺の弾けんばかりの笑みを見て思う、売らなくて良かったと。そう思う反面検索してしまった。ルカちゃん人形の値段を知り迷っている。  一体につき千円台からプレミアものだと万の値がついているものだってある。買い取り業者の広告は誤植だらけで、訊ねようにも住所はおろか電話番号すら記載されていなかった。 「ママありがとー」  駆け寄って頬擦りする娘、天然パーマで剛毛な毛が頬にあたる。綾香と同じくらい細めな目がもっと細くなって笑う。 「新しい服がたくさん買えてあげたら、ごめんね苺・・・ごめん」  娘の苺を抱きしめながら言葉に詰まる。たくさんの洋服が買ってあげられる経済力があれば、我慢強い子なんて我儘なことを言わない子なんて思わせずにすんだのに・・・
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