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姪っ子の髪を整えるのが大変だなんて知らなかった。じっとしててと言っても頭を動かしてばかりで、未美から頼まれているツインテールが綺麗に整えられないでいる。
「おじさん、まだー?」
リビングの床に座っている未美は新聞紙の間に挟まっている広告チラシを床にまき散らし、その中の一枚を折り紙代わりにして時折後ろに顔を向けようとしている。僕は苦笑いしながら、あとちょっとと言い片手に櫛を片手にヘアゴムを手に持ち悪戦苦闘。
「ほら、できた。さぁ、行こう」
未美が通っている幼稚園バスの到着時間が迫っていた。未美を抱っこしたまま玄関扉の鍵をかけダッシュでエントランスへと向かう。はしゃいだ声を上げながら応援してくれる未美は嬉しそうだ。
「がんばれ、おじちゃん!!フレフレおじちゃん」
向かい側の道路を渡り切り送迎バスが停車する場所につく頃にはへとへとになっていた。未美を下ろして肩で息をする。
「ま、間に合った・・・っつ、はぁぁ」
膝に両手を当て地面を見つめていた僕に折りたたまれた紙が渡された。ウサギに折られた紙を差し出した未美は弾けんばかりの笑みを向け。
「おじちゃん、ありがとう。はい、これあげるね」
やって来たバスに乗り込むときも片手で手を振ってくれたし、窓際の席に走り込んで僕に手を振ってくれた。
「いってらっしゃい」
エンジン音を上げ去り行くバスを見送る。折られた紙を見て自然と頬が緩んでいた。僕も支度をしてバイトに向かわなければ、マンションまで戻って行くときふと気づいた。未美の笑顔を見たのが初めてだったことに。
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