つぶらな目をしたくまのぬいぐるみには

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 探し物は簡単に見つかる。茶色い熊の人形なんて種類が数えるほど棚に陳列してあった。値段は少々お高めだが、未美のいない好きに入れ替えをしようとしている罪悪感から人形の質が似ているのを見比べながら探していた。 「あーあ。派手にやらかしたわねぇ」  おもちゃ売り場にいた中年のおばちゃんが陳列棚に商品を入れ替えながら話してきた。人形を乱暴に扱う子供は未美だけではない。おばちゃんによるとこのリュックに仕舞いこんである熊の損傷具合は優しい部類に入るらしい。  四肢が取れてばらばらになったもの、人形自体に落書きを加えたもの、部品の欠如など考えられる損傷具合はたくさんある。 「でもね、お父さん子供は感づくものなのよ。ぱっと見わからないことでも見えない部分にリボンをつけてあったり、自分のサインを書いていたりね」  おばちゃんの話を纏めると直して返したほうが賢明らしい。けど、高校の裁縫授業以来針と糸を持ってない僕からしてみれば下手に縫い合わせて元に戻すより新品のほうがいいと思う。 「お買い上げありがとうございました。お父さんその人形はちゃんと供養して下さいね」  お節介おばちゃんは最後に意味深な言葉を吐き笑顔で会計を終える。僕は百貨店を出てマンションへと急ぐ。 ♦  ポケットの中の鍵を漁っていると、後頭部がひんやりとする。驚き振り向くが誰もいない。気のせいかとまたポケットの中に手を伸ばす。    ガサ  ひらひらと落ちていく紙。未美がうさぎの折り紙代わりに使った広告だ。屈みこみ拾い上げ広告文を見やり気づく。 「誤植だよこれ・・・」  店名は書いてあるが肝心の住所、店主、店の電話番号など大事な部分は刷られていない。ポストに直接投函したのだろう。その店主は抜けている店主だろうと苦笑いをする。慌てていたにしろ確認するだろう。 「ますよ」  鍵を差し込み中に入ろうとノブを回した時、唐突に聞こえた女性の声。首筋に伝うチクチクしたもの。  首が重い、ゆっくり動かさなければいけないほど、身体は鉛のようになり首は寝違えたようにゆっくりしか動かせない。 「あなた乗っ取られますよ」  瞳に映った女性は小柄で陶器の東洋人形のように色白な肌で、ゴスロリだかロリータだか判別付かない恰好をしている。真っ黒なワンピースに赤黒い薔薇の髪飾りを頭につけて、白いソックスは膝頭まであり、黒いヒールが高い靴を履いている。  人差し指は細く爪の部分は黒い。一瞬の判断で恰好が判別できないと書いたが間違っていた。完全にゴスロリな格好だ。 「乗っ取られるって・・・誰に?」  口角が上がる真っ赤な唇が、紫色の瞳が僕の後方に向いていた。  ギシギシと何かが軋む音、抵抗する僕。何度も見ているそれは茶色毛並みをしている腕だ。飛び出ていた瞳は光り輝いて僕の首を絞めていた。 「ミツケタ、アタラシイ、ウツワ」  
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