15人が本棚に入れています
本棚に追加
発達した医療技術は、奇跡の様にその命を繋ぎ止めていてくれたのに。
僅かな希望の糸を繋げ、生き永らえて来た命はあまりにも無垢で、つい穢れを知らぬ心持つ君に騙されてくれてありがとうと思ってしまう。
恋に恋して。
僕と言うエナジー・ヴァンパイアの餌食となった可愛い人よ。
夢の中で誘ったね。
君が病院から抜け出せる様に仕向けて。
何時もベッドの上にしか居られなくて、誰かとの恋なんて不可能だと思っていた君。
管理の行き届いた、白い消毒薬の匂いが満ちる部屋。
決められた時間に行われる診察と、限られた面会の時間。
死と隣り合わせの癖に、果てしなく続く退屈はしのぎ難く、自由なのは心だけだったね。
僅かな同年代の知人が持ち込むお話と、ふんだんに溢れる恋物語の書物に憧れて。
白い檻から出たいと願うお姫様は、僕が見せる夜毎の夢に囚われた。
本当の恋を知る前に、素敵な夢を見せた僕へ。
夢魔の如く君の夢に忍び込み、夢物語を実現させるべく数多の障害を巧みに取り除き、君をここへと導いた僕。誰かの落とした紙幣を君に拾わせて、無粋な監視カメラの死角を教え。貴重な友達の口からこの橋の場所と行き方を語らせて。
最初のコメントを投稿しよう!