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後は僕の腕の中、形を保てなくなった希薄な魂が解けて消えるだけ。
残された肉体は、また誰かが見付けて片付けてくれるだろう。病室から抜け出した愚かな子として。そうして僕は次の獲物を探し力を蓄える。何時かここから解き放たれる為に。
命を啜られ、心を食われ、欺かれていたのだと気付き、どうしようもない絶望と失意を抱き君は死に逝く。
嘲りの笑いが浮かぶ顔で君を見た。罵れば良いと。
でも、君の口から告げられた言葉は、最期まで恋に恋したままだとも受け取れるもので。
こんなのは初めてだ。
ああ、君の恋は叶えられたのだろうか、破れ去ったのだろうか。
「夢をありがとう」だなんて。
光と闇の支配する時間のあわい。
僅かな時だけ、可視化される僕の存在。
魔性の存在にたぶらかされ、その命を差し出す様に仕向けられたと言うのに。
嘘を知りつつ、全てを受け入れたのか。
それとも憧れた恋への恋慕を叶えたのか。
写真に焼き付けられた夕焼けと朝焼けが、見分けがつかないのと同じ様に、僕には今この胸に焼き付いた感情がなになのか分からない。
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