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一度芽を出した疑惑が、穏やかでいたい僕の心に絡みついてくる。死に様を語るクリアな三つの声達に、今更抱いてしまった違和感。
のんびりした口調が特徴的だった女の子は、不安定な石の傍で、大嫌いな蜘蛛の死骸を見つけてパニックになったって言ってたけど。
『ちょうどここで、『危ない! 靴紐ほどけてる!』って言われて……』
────声をかけられることさえなければ、あの子は足元のグロテスクな存在に気付かないまま、無事にあの道を走り抜けられたんじゃないだろうか。
少し前に猫を亡くしたボーイッシュな女の子は、溺れてる猫を放っておけなくて川に飛び込んだって言ってたけど。
『『大変! 子猫が流されてる!』って青ざめてて。どこにいるのか、あたしにはちゃんと見つけられなかったけど……』
────豪雨のせいで流れが激しくなった川で、猫の姿なんて見つけられるものだろうか。
恋敵を深い穴に落とそうとしてた女の子は、失敗して、自分が落ちてしまったらしいけど。
『いきなりあいつが真横向いて、『綺麗な蝶々が飛んでる!』とかなんとか言って走り出してっ……』
────視界が悪くなるほどの雨の日に、翅がはっきり見えるほど呑気に飛んでる蝶々なんて、僕は見たことがない。
冷たく湿気た匂いが、鼻の奥に染みる。
三人とも事故だ。引き金になったのは本人達じゃないのに、どんな見方をしても、どれもやっぱりあくまで“事故”だ。
ああ、だから、“赤い部屋”なのか。意図に気付いて、僕は震えそうになる。
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