悪魔が笑う森

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 同時に、ふと構築された別の問題が、また僕の肝を冷やした。  最初に会ったあの子から、『心残りだから』と言って出題された謎。若者達が迷い込んだ、雨夜の山小屋での殺人。  殺された四郎。『誰が犯人か知らない』と言う一郎。『三郎が犯人だ』と語る二郎。『一郎が四朗を殺した』と主張する三郎。  “犯人だけが本当のことを話して、犯人以外は嘘を吐いていた”  “事件のことは、その遭難した若者達しか知らない”  そのおかしな条件に矛盾しないで当てはまる存在が、一人だけいることに、僕は気付いた。  殺された四郎と、容疑者の一郎、二郎、三郎。その四人の他に、遭難した若者が、本当はもう一人いたとしたら。この事件のことを知ってる、が。  あの子達にこの問題を出したのは──── 「大丈夫?」  感情の薄い声をきっかけに、うるさい雨の音が、耳の傍まで戻ってきた。  冷静な眼光が、真っ直ぐに僕に刺さる。 「固まってたけど。身体が冷えた?」 「ああ、いや……大丈夫……」  不穏な考えを振り落としたくて、僕は大袈裟なほど首を横に振った。  違うよな。こんなひねくれた答えが正しいわけない。さすがにアンフェアだ。
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