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そして、
神隠しにあってから、もう十一年もの時がたち、昨日私は、二十歳になった。
二十歳になった今でも、もう何年もの間、私は、この小さな山に通い続けている。
木の枝に目印としてくくられているのは、紅く色づくヤツデの葉。
一年中、朽ちることもなく、つけられているその葉の木の前に立ち、私は手紙を天へと、投げる。
すると、その投げた手紙は、またたく間に黒い羽根に覆われる。そして、私の手元には一枚だけ羽根が落ちてきて、舞い踊っていた残りの羽根は消えてしまう。
それと同時に、投げた手紙もどこかへ消える。
私の手元に残った羽根も一晩がたつと消えてしまうから、また次の日、私はここの山に来る。
それが私と天狗の、約束の証。
私が人間としての生を終えたとき、私は彼の奥さんとなると、誓い合った。
それまではこうして、文を交わして、彼の一部に心を寄せると約束したのだ。
人生百年と言われる時代、私が彼に嫁ぐのはまだまだ先だ。
けれどそれが私の楽しみとなり、死を、恐れない理由となった。
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