第00話 姫の逃亡劇

4/6
前へ
/14ページ
次へ
 黒い鳥がさえずり、白い鳥が奇声を放つ。 「イオンさん、ちょっとええ?」  シュヴァルツ三大貴族グローヴァー家に仕えるイオンに声をかけたのは、ツツジの里の少女ーー七瀬だった。  イオンは首を傾げ、七瀬から話を聞く。  イオンは真剣に聞いていたが、とある単語が七瀬の口から露わになると、顔を強張らせる。 「王国復興の為や。イオンさん、一役買ってくれん? あんたの協力が必要や、グローヴァー家領主を暗殺するには」 「七瀬さん、タダでは出来ませんよ。タダでは」 「あんたも、現金な奴やなあ。まあ、ええ。金ならぎょうさんあるで、これでどうや?」  そう言い、七瀬は小さな袋をイオンに手渡した。 「これだけのお金の出所が知りたいですね。まあ、良いでしょう」 「イオンさん、おおきに」  これで、契約は結ばれた。あとは、親ノールオリゾン国側の領主を殺せば、親ノールオリゾン側も黙ってられないだろう。 「ダニエル様、あんたも悪い奴やなあ。人殺しするんやもん、それなりの対価払わんとなあ」 「世の中、綺麗事じゃやってけない。僕には、シュヴァルツ王国復興を果たさないといけないんだ」  そろそろ、グローヴァー家第一子息とソレイユ第一令嬢の婚約は行われる。グローヴァー家領主の命のタイムリミットは来るだろう。  上手く、上手く行けばいい。  シュヴァルツ王国復興の道筋は、始まったばかりだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加