パンの耳

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パンの耳

次の日の朝、ソワソワと窓の外に目をやりながら待っていると昨日の男の子がやって来た。 昨日の棚とは違う棚にあるパンの値札を見ようとしている。 僕はパンを追加するような仕草をして、あの子の前にチョコレートでコーティングしたパンの耳が入った袋と値札を置いた。 値札を見た男の子は、手の平の小銭を握りしめながら店の中に入ってきた。 そしてパンの耳の袋を持ちレジに来ると 10円玉を差し出した。 僕は小さな手から10円を受け取る。 「ありがとう。また来てね」 彼はその日から、僕の店の大切なお客さんとなった。
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