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体も回復し退院した僕は退職。
失業手当を受け取りながらハローワークで仕事を探した。
応募しようと思えば条件に合う企業は結構あった。
でもどれを見てもピンとこない。
やりたい仕事を見つけたいけど何がやりたいのか分からない。
何に基準を置いて探すのか。
その日もモヤモヤした気持ちでハローワークを後にした。
時計を見ると11時半。
そろそろお腹も空いてきて自然と食べ物屋に目がいく。
ラーメン、牛丼、バーガー。
どれも魅力的な香りを漂わせ僕を誘惑する。
僕は少しゆっくりした足取りで歩いていく。
その時、あるのぼりに目が止まった。
「人気のメロンパン」
パンか。久しぶりに昼飯はパンでもいいな。
メロンパンも食べたくなったし。
僕はのぼりのある、小さなパン屋に入った。
パンの種類は多くはないものの、お洒落な名前の可愛いパンが並んでいた。
とりあえず人気のメロンパンは確定、後は調理パンとサンドイッチにした。
家に着いてコーヒーを入れテレビをつける。
メロンパンを取り出しかぶりつく。
確かにうまい。しっとりとした生地のパンの中にメロン風味のクリームが入っている。
これは女性に人気がありそうな感じだな。
でも僕の好きなメロンパンはもっとサクッとしたクッキー系だ。
中のクリームも入らない。
やっぱり、おばさんのメロンパンが僕の中で
最高なんだよなぁ。
でもあのパンはもう食べる事が出来ない。
どこに行けばあの味に巡り会える?
探すのは困難だろう。
僕はおばさんの作るメロンパンと全く同じものを求めているんだから。
一生食べれないのか。
いや、ちょっと待てよ。
一つだけ方法があるぞ。
無い物は作るしかないんじゃないのか!
僕は興奮ぎみにパンを口の中に押し込み、
コーヒーをゴクゴクと飲んだ。
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