消えた

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気になった僕は勇気を出して、パン屋の隣に ある古ぼけた薬屋に入った。 一緒に来てくれた彼女は不安そうに店の外から僕を見つめている。 「すいません。ちょっとお尋ねしたいんですが隣にあったパン屋の事なんですけど」 店の奥で新聞を読んでいたおじいさんがズレた(ズラしているのか?)メガネをかけ直し、説明を始めた。 「パン屋かい?もう二年くらい前かなー。 篠田のばあさんが長い事頑張ってたんだけどなぁ。体壊しちまって。 どこだったか、息子さんのいる北陸に 引っ越したんだよ。 何?あのパン屋のお客さんだった人?」 「いえ、僕は学生時代にそこでバイトさせてもらってたんで久しぶりに寄らせてもらったんですけど。テナント募集になってたんで、おばさんどうしたのかなって」 「うむ。それは残念でしたな。 ばあさんも会いたかっただろうけど。 隣はずっと空き家のままで誰も借り手がなくて。もう、個人商店はダメなんだろうなぁ。 この店も俺が死んだら閉店、閉店。 老いぼれ爺さんの命も来年まで持つかどうか。はっはっはっ」 おじいさんは一人で笑った。
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