891人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
詰め寄ってくるから、ついその距離を縮めてしまって。
やっちゃったものは仕方ない。
「店の中で大声出したら迷惑だろ」
「向坂がっ!するからいけないんでしょ…」
顔を覆い、座り込みながら尻すぼみに言葉を発する。
そりゃ、人目も気にせずしてしまったけど、その反応は予想外なんですが。
ギャップありすぎじゃね?
恥ずかしいのかなんなのかわからない行動に、小さく独占欲が芽生える。
「いーちーか?」
「──名前!呼ばないで!」
大声ではないけれど、それでも叫ぶ三木を見てなぜか笑顔になる自分がいて。
こんな三木を会社の誰も知らないのだと思うと、なんだか嬉しくなる。
「これから名前で呼ぶから」
「え、何?それはあたしに対するイヤガラセ?死刑宣告?」
早くもいつもの三木に戻って、よくわからない二択を聞いてきた。
「死刑って、名前呼ばれるのそんなにイヤなこと?」
首を傾げて聞けば、すっごい何度も首を縦に振る。
そうか?
全然わからんな、三木一楓という人間が。
「…何やってんの?」
眉を寄せて悩んでいると、聞き慣れた声が背後、というより斜め後ろから聞こえる。
「真殿先輩こそ、ここで何を?」
「俺は夕飯がてら彼女に会いに」
最初のコメントを投稿しよう!