890人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
あの日、店に置き去りにした向坂から、五分後に連絡があった。
とにかく、彼女だということを忘れるなよ、という念押しの連絡。
それが月曜日のこと。
やっと週末になって、やっと…やっと解放される。
「ホラ、あのヒトがそうよ」
聞こえるように話をする、他部署のキレーなヒト。
今、休憩時間なのかしらね?
どっかの誰かさんのせいで、浴びたくもない注目を浴びるようになった。
パソコンを見つめながら、小さく音にならないため息を一つ。
そんな視線をさえぎるようにドカッと音を立て、隣に誰かが座りめちゃくちゃ盛大なため息。
っても、隣に座るの一人しかいないんだけど。
「ここは動物園か水族館か何か?」
「ここは人間の会社の経理部よ」
変な質問、まぁ、わからないでもないけど、その檻の中にいるのあたしですから。
しかも、あなたもある意味そんな感じよ?
「あー、鬱陶しい」
「千雪ちゃん、心の声」
ダダ漏れだよ、後輩。
本人はキレイだとかカワイイとか言われることがキライらしく、その顔に似合わずすごく口が悪いのだけれど。
隠れファンはあたしの席の前にもいたりする。
「先輩、私の今までの視線、どんなのかわかりました?」
「あなたとあたしに対する視線の意味は全然違うと思うけど」
最初のコメントを投稿しよう!